交流事業に同行、取材してきました。
縁が有って交流が始まり10年、最初は行政の援助をもらったそうですが、その後は援助無しで民間だけでどのような交流が可能なのか試行錯誤してきました。K地域の方々K神社の厚い支援のおかげで物産販売の売り上げも伸びて採算面もどんどん改善、交通費・宿泊費を入れてあと一歩というところまで来た。しかし、天気に左右される面はどうしても仕方がない。その年の天候によって随分と変わるらしい。
しかし、お金以外にもっと重要なものを得ているという事がわかった。だから業者さんも参加を継続している。
物語風にしてレポートします。(ほぼフィクションです)
朝6時30分にNPOの3人はN県のN駅に集合して新幹線で東京へ向かった。
地震の直後、S省の実証実験にC区とN市が参加した縁が今日まで続いている。
2階建て新幹線の1階、三人掛けのシートに3人並んだ。
「もう10年になるよね」
販売関係をコーディネートしている近藤が遠い目で話す。
少し考えてから中貫が追った。
「災害の翌年からだったと思うから10年目になるかなあ」
「え、もう10年も経つんすか。」
思わず驚いた田辺は今回が初参加である。いつも行くメンバーが急に都合悪くなり、ピンチヒッターでの参加である。
中貫は2回目くらいからC区及びK地域の皆さんとの交流で中心となって活躍している。
中貫が語る。
「C区さん、K地域の皆さんにはいろいろお世話になってきたなあ。西口商店街や、小学校跡地で様々なイベントに参加させてもらった。そのあと今日行くK神社や先週のY神社のイベントにも参加させていただいたなあ。」
「いろいろ参加場所が移ってきたんですね。」田辺は経過をよく知らない。
「K神社も今日が一番良い日なんだよね、お祭り中だから大勢の都民が参拝に来ると思うよ。」近藤は参拝客の数を計算している。さすが食品製造販売企業の営業の責任者である。桜と行事がうまく重なり天気に恵まれると参拝客がぐっと増えるのだ。
新幹線はやがて東京駅に着き、中央線に乗り換えO駅について初めて外に出てみると雨だった。
そして徒歩10分くらいのK神社に着いた。
「雨で、しかも少し寒いなあ」と近藤が残念そうにつぶやく。
桜は葉の緑が目立ちつつも、まだまだ花びらがいっぱいついている。
風が吹くと花が降ってくる、これはこれで風情が有る、あとは雨と気温次第なのだ。
少し手違いが有り、もう一つテントを建てることになった。
大きなイベントや行事では少なからずこういう事態はあるもので、解決できるかどうかは担当の力量である。
この日、K神社の担当者は何処にも予備が無いと言われたテントをどこかから調達してきて組み立て始めた。
無いものを見つけてくる。
中貫、近藤、田辺と他のメンバーも参加してテントを組み立てる。
今回のメンバーはNPOの3人と、N市の酒販売店から2名。そしてN市の観光団体から2名。
レポートしている私を入れると8名である。
NPOの3人が、今回都合で来れなくなった漬物店とN市特産品店の商品を売ることになっている。
酒販売店はN市を中心とした地酒販売と甘酒、玉コンニャクの販売を行う。
「C区への食品販売申請は先週のうちに済ましてある。N市と考え方が少し違い、こちらはこういう分野は比較的簡素化してあるようだ。」
まちづくりイベント関係に慣れた人は、素人には難しそうな行政への申請をいとも簡単にこなす。
若く慣れていない人が何かをやる時にベテランにも入ってもらうか相談できる体制にしておかないといらないプレッシャーで疲れることになる。
N市の観光団体の方は、日本の政財界の中枢にあるK神社で各種調査と観光PRの目的で参加している。
さすが観光に精通している2人だ。
「もうすぐ晴れるよ、この雨雲が通り過ぎればだいじょうぶ。」そのうちの一人が心配そうなメンバーに向かって言う。
その通りに直ぐに雨は上がり境内に人が増えてきた。
「あれは何を売っているんだ?」N市のテントの脇にあるテントに大勢が行列しているのを見て中貫が不思議がった。
「あれは「ラブ〇〇」という有名企画の関連商品販売ですよ。」田辺がその企画を知っているようで答えた。
「あれがいわゆるA地域のオタクさん達なんですかね。N市じゃ見たことも無い行列だな」近藤も不思議そうに眺める。
「サンキューまつりみたいですね」N市観光団体の別の人がつぶやく。
「あっ、そうっかサンキューまつりね」近藤は膝を打つ。
サンキューまつりはN市のお菓子屋さんが行うシュークリームの格安売り出しイベントであり、その大行列はN市の風物詩になっている。
サンキューまつりはいわばスイーツオタクを集めているのだ。本当に好きでお手頃のものはだれでも欲しい。並んでも欲しいのだ。
「そういう商品・企画をするという事なんだな、やっぱり。」中貫が行列を見ていつも言っていることを確認していた。
そうこうしているうちにN市ブースにぽつぽつお客さんがやってきた。
まだ準備中だが担当の近藤が対応する。
「おかあさん、これは味付けしてあるからそのまま食べられるよ。」
「あらそう、それは良いわね、味は?」
「これは醤油、塩分は押さえてあるから安心して」
こういうところは、ただ売ればよい場合とファン作り狙いの場合とがある。
ここの参拝客は何でも良いから買うという姿勢は見せない。
かならず、商品について聞いてくる。
営業畑の近藤には得意と言ってよい販売形態になる。
その後、去年買ったという人も懐かしそうに寄って来ていた。
近藤はちゃんとファンを作っていたのだ。
K神社は結婚式でもすっかり有名、雨もすっかり上がった境内はひっきりなしに新郎新婦の行列が動いている。
欧米系の観光客が盛んにカメラを向けている。
一般の人にも花嫁姿を自由に見てもらえる素敵なやりかたです。
観光団体は観光PRとN市のイメージ調査、仕事ですのでやるべきことをきちんとやります。
N市は夏祭りと米と酒のイメージがやはり強いわけだが、近年のN市の故事ブームや同時期の人物が最近再三テレビに登場するなど、歴史面を知っている人が増えているようだ。
テントの中で待つだけではなく歩いている人に声をかけて、アンケートをいただきます。
N市の観光団体、いわゆるN市の外郭団体なんですが営業の基本技術があるようです。
中央には田舎者には想像できない優秀な人達が大勢居ます。
この日もN市と付き合いの長い方がN市のお酒を買いに来ました。
この方も行政職員ですが、それを超えたネットワークを全国に築いている人、担当部署を離れてからも来られている。
「去年はこれを買ったから、今年はこれをもらいます。」
ちゃんといわゆる日本酒うんちくを持っていてこだわりを持っています。
ただのお付き合いでは無いのです。
この漬物を選ぶ、この野菜を選ぶ、このお酒を選ぶ、そういう人達が来るのがK神社。
こういう方々に耳を傾けて、本物志向の地方になって、地方創生がなるのかもしれない。
地方主体の「地方の行政と、業者と」だけの取り組みで地方創生が発案された場合。
消費者の考え・価値観・文化を見ていないお手盛りの企画、想像できますよね。
それは「今まで通り」なのであって【地方創生】などとても出来ない。
このC区とN市の民間交流事業。
厳しい都民区民の目、人間的で優しい都民区民の購買姿勢。
取り込もうとするN市の民間企業・NPO・観光団体。
これをうまく育て上げられることが出来た時、地方創生の種が生まれるのでしょう。
今後、N市が取り組むもの
「 地方創生」
政府が掲げる日本を救う施策の名前だ。
K神社の美しいさくらの下で種が生まれました。
何でもいいから買う人たちで無く
こだわりを持ったK神社の参拝客
その対面販売から生まれるこだわりの世界
この場合、今日の場合、日本の飲食。
繋いでほしいですね、この国の為。
夜は、N市で行う伝説のイベントを行ったT氏の関連店で反省・交流会、参加者の間では包丁の入れ方で味は全く変わるとか深い話がなされました。
C区の人達の研ぎ澄まされた感性にドウヤッテ答えられるか。
N市は実はその関係だけでアドバンテージが有ります。
それは10年の蓄積。
「地方創生」に生かせてゆける。
そう、強く感じる参加者達であった。
おしまい