ウィザードグラス 双葉文庫
面白かった。
前作プロパガンダゲームと比べシンプルなテーマ、その分テンポが良く私にもスっと入って来て面白かった。
読んでいて気付いた事をメモまとめしておく。
作者が東北で取り組んでいられた復興や地域づくり、そしてICTに関するヒントをいろいろもらった。
「行動」
… 根本さんは「行動することが大事」と前から言われていた、この小説の中では何かを変えようと行動しようとしても「日常という重力」がそれを困難にしているとしている。
もちろん主人公は行動を始めている。行動を始めるにはどうするのかについては様々な手法がネット上にあるので調べてみるのも面白い。
「災害ユートピアとエリートパニック」
「テロ対策で〇〇を行う」、この小説の中でもこの考え方が出てくる。これに関しても作者根本さんは「災害ユートピア」という本を読んでいて、以前「災害ユートピアが続けば」とツイッターに書いていた。災害時に人々が助け合う臨時的なコミュニティを災害ユートピアと言い、その対立であるのが「エリートパニック」災害時に暴動が起きて自分達の政権が崩れるのではないかと疑心暗鬼になった首長やエリート役人たちが起きても居ない暴動に対し警察や軍での鎮圧を試みる。もしくはスーパーへの襲撃が起きているとのデマか何かを針小棒大に取り上げる。
そういうものをこの小説の中の敵に見ることが出来る。
つまりこの小説は権力の乱用がICTやAI等を使い行われた時に市民としてどのような対抗が出来そうなのかというお話としても読めます。
私の個人的な意見ですが、根元さんが以前から取り組んできた地域の活性化。
その基本・最小単位は家族・兄弟から…。
AIという敵に勝てるのは想いや感情・感性なんだろうなと思わせる展開でした。
面白かった。
AIの登場を待つまでも無く、コンピューター的な考え方は世に広まっていて、核家族、バラバラな地域・町内はそう言う考えの基に生まれた感。
この小説はきっと、やはり、地域社会・人間についての問いかけであると思う。
それと、前作「プロパガンダゲーム」を読まれた方には最後の方でボーナスがあります。
「強い意志・行動に移す・仲間」が持つ可能性を提示してくれてほっこりした。
そういえば敵のICT企業群GAFAもそれぞれは「強い意志・行動に移す・仲間」で始まってこんなにも世の中を変えて来たのだ。
ぜひ一読を。