少しでもネットやっていて、防災に感心のある方はそう思いますよね。
「ネット使えば市や自分の地域でも最新知見に基づいた防災出来るんじゃね?」
「既にいろいろな技術が開発されているし、ワードプレスみたいなオープンソースもあるし・・・。」
→ 安心してくださいみんなで地域の防災が出来るようにっていますよ。
というお話しです。
シンポジウム「災害に強い社会の実現に向けた災害リスク情報の共有・利活用」を見に行ったところ・・・
※編集者注:この分野は災害そのものを防ぐものでは無く、災害に強い地域・町内、市町村を作りましょう。というものです。みんなで考え・知らせ合い・助け合う。それにより、避難が改善され、市町村もボランティアも避難所もスムーズにゆく。最終的に被害が最小限となり、早期復興、予算も最小化するのではないかというものです。
いいことずくめ、問題は国民・市民が問題意識を持って取組まれるかどうかでしょうか。
・・・ぞくぞくと課題に沿った仕組みが出来ていました。
しかも基本的にGPLライセンス。誰でも使えます。
ということで、びっくりポンだ~のシンポジウム「災害に強い社会の実現に向けた災害リスク情報の共有・利活用」のレポート。
以下の順番で紹介します。
- 社会防災システム研究領域社会リスク研究
- 出発点のEコミプラットフォーム
- シンポジウムで紹介されたシステム
- 難しい大学研究等も解り易く国民・市民のもとへ
シンポジウムでは一般市民が使える様々な防災システムを説明していました。
中心になっている考え方は難しい理論・技術を解り易くしてプログラミングしWebで国民・市民の手元へ。
という感じでしょうか。
では、早速私たちが使えるシステムを紹介します。
1、防災システム研究領域社会リスク研究
防災科学技術研究所は様々な研究分野が有ります。
地震の研究・火山の研究・台風や豪雨の研究・雪氷の研究等です。
そして10年前にこれからの防災はどうあるべきかと始まった、社会防災システム研究領域社会リスク研究。
この先見性、素晴らしいですね。
(筆者はその頃のほんの数人しかいないメンバーと会って、地元を案内しました。謎の人達でした^^)
この「社会防災システム研究領域社会リスク研究」は、私たちの社会そのものが災害に強くなるように研究する分野です(おそらく)。
ですので、
- 社会リスク研究の皆さんは実際の町内や集落に入って住民たちの本音を聞きだし、どのような情報が有れば判断が出来るのか、防災を考えやすくなるのか研究されてきました。
- 高学歴な研究者がじいちゃんばあちゃんや若いもんたちの言葉を真剣に聞き出していました。
- また、各地の防災団体の活動の調査なども。
という様な事をされてきました。
2、出発点のEコミプラットフォーム
最初に出た答えが、普段使えるシステムを作って災害時には防災で使えるWeb情報システム。
最初に開発されたのがたしかこのeコミグループウエアです。
徹底的に磨き抜かれたシステムは追加機能不要でまちづくりから防災までこなせます。
基本的にはCMS(コンテンツマネジメントシステム)、まあブログの親玉みたいなものです。
場合によって個人情報なども取り扱えるように閲覧権限や編集・記入権限が細かく設定できるようになっています。
また、最初からグループ・団体での利用を考えているので多機能ながら機能パーツは(アンケート・カレンダーその他)高機能でシンプルです。主な凄い機能
- かなり細かな設定のアンケートが作れます。アンケートや投票に使うほとんどの機能を持っています。
- マップはデーターのレイヤー(重ねられる)が使え、地図種もグーグルマップ各種から国土地理院マップまで利用できます。これは凄いです。
- カレンダー機能、間近に迫った予定を目立つ場所に自動表示してくれるなど、人間のうっかりにも対応。
そしてeコミグループウエアとも接続も可能な画期的eコミマップ
スティ-ブジョブスがレコード会社をまとめ上げネット配信の仕組みをつくり、iPod1つで聞くことができる仕組みを作りました。
防災科研のeコミマップはそれに匹敵する大革命。(筆者の感覚では)
あらゆるマップを1つのページ内で重ねて表示できるようにしました。
それまではとても不可能と言われていたことです。特に以下。
- 地図を持っているところそれぞれの会社・役所に権利が有ります。(企業はそれが商品なのです)
- また、地図の縮尺方式その他もろもろの部分で合いません、ずれるのです。(業種によって使いやすい方式を採用)
そのへんを突破、様々な地図が取り込めるように権利を取得し・納得してもらい、方式のずれなどを技術的にカバー、重ねられるようになりました。
※2011年度地理情報システム学会賞(ソフトウェア部門)を受賞
危険な個所が解るハザードマップと航空写真マップを重ねたりとか様々な組み合わせで地域の特性が一目でわかります。
Eコミマップは奇跡です。これもフリーで使えます(サーバー代とかはかかりますが)
災害ボランティアセンターでも、ボランティア要請のある家と対応済みの家とかその内容とかも管理でき、大幅な合理化と精度を達成しています。
3、シンポジウムで紹介されたシステム
eコミのページでも紹介されているものから
- 「 地域コミュニティの情報基盤となるシステム~eコミュニティ・プラットフォーム~」・・・(eコミグループウエア・・・一般レンタルサーバでも動きます。)
- 「地域コミュニティによる防災を実践する支援ツール~地域防災キット~」・・・ガイドに従ってゆくだけで、地域の各種リスクを知り、防災計画が出来るようになります。防災コンテスト(マップ、ラジオドラマ)はこれを使っています。
- 「災害ボランティアセンターの効果的な運営のための支援ツール~災害ボランティアセンター運営支援キット~」・・・常総市(東北関東豪雨、鬼怒川氾濫)の災害ボランティアセンターでの情報利活用についてのPDF
- 「津波被災地における被災者の継続的な見守りのための支援ツール~見守り情報管理支援システム~ 」・・・様々な支援団体や組織が協働し、応急仮設住宅等の被災者に関連する情報をクラウド環境で共有・管理しつつ、より包括的かつ効果的に被災者の支援を行うためのツール (もちろん他の災害でも応用できます)
- 「津波被災地の映像や資料を新たな災害対策へ活用するための支援ツール~デジタルコンテンツアーカイブシステム~」・・・災害アーカイブデータベース
3.11等の災害復興過程での要請等で開発され実際に使われたものは、その他の災害にも応用できます。とにかくあの大きな災害に社会リスク研究チームが直接乗り込んで研究されたものが各地でも使えるように修正され提供されるのです。
すばらしい。
4、難しい大学研究等も解り易く国民・市民のもとへ
シンポジウムの一番最後に発表された、「第二部「研究開発成果の最大化とこれからの防災研究に求められるもの」」と午前中のポスターセッション「 地域が抱えている防災上の課題と解決方法である研究成果を結び付け提供するサービス~統合化地域防災実践支援Webサービス「ALL防災Web」~」は 同じシステムを扱っています。
概要・目的を引用します
概要・目的
地域防災対策支援研究プロジェクトでは、全国の大学等における理学・工学・社会科学分野の防災研究の成果を一元的に提供するデータベースを構築するとともに、大学等の防災研究の成果の展開を図り、地域の防災・減災対策への研究成果の活用を促進するため、2つの課題を設定して事業を実施します。(1)研究成果活用データベースの構築及び公開等
地域の防災・減災対策の実施主体となる地方公共団体の担当者等が防災・減災対策を実施する際に必要な研究成果に関する情報を提供する。
(2)研究成果活用の促進
(1)で構築するデータベースや地元の大学の防災研究の成果等を活用し、地域の特性やニーズを踏まえた効果的な防災・減災対策の検討を行う。
簡単に言うと「大学や各研究機関の難しい研究を国民が解り易い形に訳してデーターベース化してネットで探せるようにして、全国の市町村・地域の防災担当の役に立つシステム開発」だと思います。
この研究の過程で、委員からかなり自由な意見が交わされ、なおかつ各地域の防災担当にデモンストレーションを行い、現場の実態、要望を取り込んだものになっています。私の地域では防災担当の方々に声をかけるお手伝いをしました。
これが完成して情報が共有され、検索できるようになれば各地の防災担当者は取りつく島がいっぱいでき、災害被害は間違いなく減少してゆくでしょう。
とにかく、学問の理想を追うような形では無く、各大学の先生ももちろん社会リスク研究ユニットの方も現場と向き合っている点が頼もしいです。
とにかく今はまだ研究や実例は少ない段階のようですが、ここに順次全国のデータが入ったら凄いこと(凄い減災)になりそうです。
世界に標準として見せられるものになるでしょう。
今後に期待です。